【敗北】タージマハルを見にインドへ行ったのに、デリー駅の圧倒的カオスにボコボコにされて辿り着けなかった話

世界遺産・タージマハル。白亜の美しい宮殿。
それを見るために、私は遥々インドはデリーへとやってきた。
デリーとアグラカント間

結論から言おう。
私はタージマハルを見ていない。

見るどころか、アグラ(タージマハルがある街)行きの列車にすら乗れず、デリー駅の冷たいコンクリートの上で魂を根こそぎ吸い尽くされて敗退した。

「ネットで調べれば対策などいくらでもあるだろう」という声が聞こえてきそうだが、
私は誰よりも慎重に、前夜のロケハン(下見)まで完璧にこなした人間なのだ。
これまで30か国以上を渡り歩き、ストライキや満席に見舞われても、
バスや地元民のヘルプなどの代替手段で泥臭く生き延びてきた。

それなのに、なぜ私はデリー駅で、
ただ遠くを見つめるだけのモアイ像のように直立不動で固まることしかできなかったのか。

完璧すぎた前夜の偵察(盛大なフラグ)

海外旅行もインドで33か国目。
それなりに旅に慣れた私は、出発前夜にニュー・デリー駅へと向かった。
そう、「下見」である。
ニュー・デリー駅

夜のデリー駅は驚くほどウェルカムだった。
夜のデリー駅は驚くほどウェルカムだった。
「ふむふむチケット売り場はこうなっているのか?」
「ネットで調べた噂よりも、ずいぶんとしっかり対応しているじゃないか!」
切符売り場

それにしても列車待ちなのかホームレスなのか分からない人たちが、我が物顔で駅の構内を寝床にしている。
駅の構内の様子

さて、ホームへはどう行くのだろうか。
驚いたことに改札もなければ、駅員もいない。
「え? ホームまでノーチェックで入れるじゃん。チョロすぎでは?」

ホームへの行き方を完璧にマスターし、脳内シミュレーションはバッチリだ。
そう確信していた。
この時の自分をタイムマシンで殴りに行きたい。
駅のホーム

ついでに、ホームで繰り広げられる「リアル・インド鉄道」の洗礼を眺めて、私は完全に旅情に浸っていた。(後で動画アップするかも)

窓を鉄の棒でブチ叩く男(え、窓割って入るタイプの乗車スタイル?)

既に加速している列車に飛び乗るスタントマンたち

自分の体積の3倍はある巨大な荷物を背負うリアル・アントマン

列車に乗り遅れたのか線路に向かってブツブツ言ってる人

列車を待つ人たち

「アハハ、インドって本当に面白いなぁ!」
この時の私は、翌朝自分がその「面白カオス」の養分になるとは露知らず、ニヤニヤしながら宿へ戻ったのだった。

覚醒した詐欺師と、眠れる本物の職員

早朝5時前。満を持してデリー駅へ。
昨晩のイージーモードは何だったのか、駅は一変して大混雑。
そして、きびきびと荷物検査をし、乗客を整列させている「いかにも仕事のできそうな職員」の姿があった。

整列する人達

「あ、ちゃんと警備してるんだ。安心だな」
……と思うじゃん?
のちに知る、先人の遺した恐ろしい格言がある。

「インドの駅で、よく働いているのは全員詐欺師。働いていないのが本物の職員」

そう、せっせと荷物検査をしていたのは、善良な観光客をハメるための「100%純粋な詐欺師」だったのである。
じゃあ本物の職員はどこにいるかって?
奥のほうで、荷物検査機を前にスマホをいじって座っているだけ。
給料泥棒が、ここでは唯一の正義なのだ。
よく働く詐欺師と、働かない職員

詐欺師の予言が「ガチ」だった絶望の瞬間
私は「駅のホームに入ってから、落ち着いてスマホで予約すればいいや」という、これまた慎重派(笑)な作戦を立てていた。

そこへ、先ほどの「自称・敏腕駅員(詐欺師)」が声をかけてくる。
詐欺師「チケットはあるのか?」
私「いや、これから7時20発の列車をスマホで予約する」
詐欺師「その列車はもう満席だ」

私の脳内レーダーが激しくアラートを鳴らす。
「出たな詐欺師! その手の手口はネットで1万回見たわ!」と心の中で鼻で笑い、彼をキッと振り切った。そして、自分の正しさを証明するためにスマホの予約画面を開いた。
画面に映し出された文字。

「……え?」

嘘でしょ。さっきまで空いてたのに!
なんで本当に満席なの?!
実際のキャプチャー↓NOT AVAILABLE(利用不可)
インド鉄道の予約不可画面

まさかのリアル予約不可画面。
詐欺師、ただの「めちゃくちゃ親切に運行状況を教えてくれるおじさん」になってるしw

動揺して立ち尽くす私の元へ、彼が満面の笑みで話しかけてきた。
「アグラに行きたいなら、いい旅行代理店を紹介してやるよ」

あ、ダメだこれ、塾で習ったやつだ。
ここでついて行ったら身ぐるみを剥がされる。
私は必死で詐欺師を振り切った。
しかし、チケットがないのでホームには一歩も入れない。

最終決戦、窓口の詐欺師?

「ネットが満席なら、もしかしたら窓口なら買えるかも?」
最後の体力を振り絞り、チケット窓口へ向かった。

窓口のブースには、案の定、職員は座っていなかった。
彼らはブースの奥に集まり、楽しそうに談笑している。インドの公務員、まじでブレない。

「すいません! 窓口から切符を買いたいんですけど!」
必死に声をかける私。

すると、どこからともなく職員でもなんでもないインド人が横からヌッと現れ、私に猛烈に話しかけてきた。

「どこ行くんだ? チケットならあっちで……」
「いや、お前は誰なんだよ! 職員と喋らせてくれよ!」

デリーの窓口

窓口の客をガン無視して奥でゲラゲラ笑う職員。
横でマシンガントークを仕掛けてくる謎の詐欺師(?)。
迫り来るタイムリミット。

午前8時の敗北宣言

時計の針が午前8時を回ったとき、私の中で何かが「プツッ」と切れた。

「・・・もういいや。カレー食べて帰ろう」

世界遺産への情熱は、デリー駅の喧騒の中に霧散した。
私はアグラに行く気力を1ミリも残さず失い、トボトボと駅を後にしたのだった。
慎重にやろうと「前夜の下見」までした行動力が、すべて裏目に出るという芸術的な大爆死である。

タージマハルより偉いフマーユーン廟

デリー駅で詐欺師と戦い、窓口の職員にシカトされ、アグラ行きの列車を完全に絶たれた私。

しかし、タフな旅人はそこで終わらない。
私は即座にデリー市内にある「フマーユーン廟」へと向かった。

現地に着いた瞬間、私は心の中でこう叫んだ。
「おいおい、これ完全にタージ・マハルじゃん。むしろこっちが本家じゃん」
フマーユーン廟
そう、このフマーユーン廟は、
タージ・マハルよりも約60年も前に建てられた「大先輩」なのだ。
しかも、タージ・マハルは、このフマーユーン廟をめちゃくちゃリスペクトして作られた「ただのパクリ作品」に過ぎないのだ。

……と、心の中で猛烈なマウントを繰り出しながら、赤砂岩の見事なドームを睨みつけた。

アグラに行けなかったんじゃない。
私は、時代の先駆者である「本家・元祖」をあえて選び、ムガル帝国の真のルーツを辿るという、極めて知的なルートを選択したのだ。

インドへ行く皆さんに、血を吐くような思いで得た教訓

チケットは前日までに、何が何でもネットで買え。
(これさえあれば、荷物検査の詐欺師を「あ? チケットあるし」とガン無視して突破できた)

駅で立ち止まってスマホを見るな。
(詐欺師に「私はカモです」と背中に貼るようなものである)

初心者は黙って飛行機に乗るか、ツアーを使え。

現場からは以上です。

フマーユーン廟(フマユーンびょう)の雑学

① 世界初!「庭園の中に建つお墓」のパイオニア
フマーユーン廟は、四角い敷地を十字の路や水路で均等に分割する「四分庭園(シャハール・バーグ)」というペルシャ様式の庭園スタイルを、インドで初めて本格的に導入した建築。
それまでのインドのお墓は、ただ建物がポツンとあるだけだったが、「美しい庭園の真ん中にお墓を建てる」という流行をゼロから作ったのがここ。
「タージ・マハルはフマユーンの高級なレプリカだから(笑)」

② 実は「世界で一番美しい世界遺産」への道を作った男
世界で最も美しい建築の一つと称されるタージ・マハルだが、その設計図やアイデアの大部分は、このフマーユーン廟をベースにアップデートされた。
「美しい玉ねぎ型のドーム」「左右対称(シンメトリー)の完璧な美」「巨大なアーチ状の入り口」など、タージ・マハルを形作る主要な要素は、すべて60年前にフマーユーン廟が実験・完成させていたもの。
つまり、フマーユーン廟がなければ、タージ・マハルはこの世に存在していなかった。

③ 建てたのは「第一夫人」
タージ・マハルは「愛妃ムムターズ・マハルの死を悲しんだ皇帝が建てた」というロマンチックな愛の物語で有名。
フマーユーン廟はその逆。
亡くなった夫(フマーユーン皇帝)のために、第一夫人(ハージ・ベーガム)が執念で建てたお墓。
しかも、ペルシャからわざわざ超一流の建築家を呼び寄せ、9年もの歳月と巨額の費用をかけて作らせた。妻から夫への愛(あるいは権威誇示)のスケールも、アグラに負けず劣らず凄まじい。

④ ムガル帝国「最後の皇帝」が捕まった因縁の場所
時は流れて1857年、インド大反乱(セポイの乱)の際、ムガル帝国最後の皇帝バハードゥル・シャー2世は、イギリス軍から逃れるためにこのフマーユーン廟に隠れていた。しかし、あえなくここでイギリス軍に拘束され、ムガル帝国は事実上の終焉を迎えることになる。
ムガル帝国の全盛期を作った先祖(フマーユーン)のお墓が、帝国の歴史に完全に幕を下ろす舞台になってしまったという、なんともドラマチックで切ない歴史が刻まれている。

タージマハルの雑学:実は「お墓」であり、左右対称の狂気

美しすぎる宮殿として有名なタージマハルですが、実はこれ、時の皇帝シャーー・ジャハーンが、亡くなった最愛の妃(ムムターズ・マハル)のために作った「お墓」。
驚くべきはその「対称性」。
建物だけでなく、庭園や池、敷地内のすべてが完璧な左右対称にデザイン。
しかし、唯一「左右非対称」な場所がある。
それは、のちに妃の隣に並べて安置された「皇帝本人の棺(ひつぎ)」の位置。
完璧な美を求めた皇帝が、自分の死によって唯一の非対称を生み出してしまったという、究極の愛と狂気のドラマが隠されている。

ニューデリー駅の雑学:世界で最も「外国人観光客用オフィス」が移転する駅

私が騙されかけた「いい旅行代理店を紹介するよ」という詐欺。
実はニューデリー駅には、本物の「外国人専用のチケットオフィス(International Tourist Bureau)」が存在するらしい。
しかし、このオフィスの場所はコロコロ変わったり、駅の構造が複雑だったりするため、詐欺師たちの格好の餌食になっている。
「あのオフィスは閉鎖された」
「あっちに移転した」
などと言って偽の代理店に連れて行くのが彼らの王道ルート。
本物のオフィスを探すこと自体が、もはやインド観光の最初にして最大の難関ダンジョン。

コメント

タイトルとURLをコピーしました