駅伝の先頭効果はどれくらいか?箱根駅伝で検証してみた

スポーツ

箱根駅伝などで話題になる先頭効果

駅伝のテレビ中継などを見ているとトップを走っている選手が、2位以下の選手を大きく引き離すシーンをよく見かけると思う。
それこそ「先頭効果」だ。
この「先頭効果」によって、一度トップに立ったチームがそのまま長い距離をトップのまま独走し続けるケースは非常に多く、過去10年間で箱根駅伝での復路(6区~10区)での逆転劇があったのは、2021年の駒澤大学、2019年の東海大学、2018年の青山学院の3回だけだ。
箱根駅伝は往路(1区~5区)で大半は優勝が決まってしまうと言っても過言ではないのだ。

なぜ先頭効果は起こるのか?

それではなぜ先頭効果が起こるのか?
一般的には次のような理由が挙げられる事が多い。

前を走る中継車が「風よけ」の役割をする

マラソンや駅伝などで先頭を走ると、選手の前にテレビ中継車などが走ることにより空気抵抗を受けにくくする。
特に向かい風が強い時にランナーはペースダウンするが、車があることで風の影響を受けにくくなるのだ。

中継車がペースメーカーの役割をしている

中継車が風除け以上に大きな影響を持つ言われているのがペースメーカーの役割だ。
一般的に、自らペースを作って走るよりも、誰かに前を走ってもらい引っ張ってもらった方が楽に走ることが出来る。
この引っ張る役割をしているのが、マラソンのペースメーカーだ。
ペースメーカーが一定区間を決められたペースで走ることで、ランナーはこのペースメーカーに合わせて走るだけで走る速さの目安を得ることが出来る。

前を追わなくてよいのでオーバーペースに陥ることが少ない

2位以下のチームが優勝を目指すには前の選手よりも速く走らなければならない。
また、追いつけば先頭効果を得られるので、余計に焦って序盤から突っ込んでオーバーペースに陥る事がある。
一方、トップを走る選手は自分のペースを守って走ればよいので、終始安定した走りをすることが出来やすい。

先頭効果を検証したところ驚く結果が

それでは実際にトップを走る選手がどれほどの恩恵を受けているのか、過去10年間の箱根駅伝で検証してみたところ、驚くべき結果が出た。

調査の方法は、箱根駅伝で逆転が起きにくいとされる復路でタイムの比較だ。
1位でタスキを受け1位で走り切った選手が、前年または翌年に同じ区間を2位以下でタスキを受け2位以下で走り追えた時のタイムを比較した。

例えば、青山学院大の中倉啓敦選手は、
2021年(第97回)の箱根駅伝10区を走り、4位でタスキを受け4位でゴールした。
この時、区間記録は4位の1時間10分17秒だった。
翌年の2022年(第98回)の箱根駅伝でも10区を走り、1位でタスキを受け1位でゴールした。
この時、区間順位は1位で1時間07分50秒の区間新記録だった。
前年度よりも2分27秒(147秒)速かったことになる。
過去10年間分を表にした。サンプル数は全13選手だ。(漏れや間違いがあったらコメント欄で教えて欲しい)

大学
選手名(区間)
年度
1位タイム
年度
2位以下タイム
差(秒)
青山学院
中倉啓敦(10区)
2022(3年)
1:07:50
2021(2年)
1:10:17
-147
青山学院
濱野将基(6区)
2022(4年)
0:59:03
2021(3年)
0:58:13
+50
創価
髙橋勇輝(6区)
2021(2年)
0:58:49
2022(3年)
0:59:04
-15
創価
石津佳晃(9区)
2021(4年)
1:08:14
2020(3年)
1:09:44
-90
青山学院
岩見秀哉(8区)
2020(3年)
1:04:25
2021(4年)
1:04:29
-4
東海
郡司陽大(10区)
2019(3年)
1:10:12
2020(4年)
1:09:08
+64
青山学院
林奎介(7区)
2018(3年)
1:02:16
2019(4年)
1:02:18
-2
青山学院
村井駿(6区)
2015(3年)
0:59:11
2014(2年)
1:01:41
-150
青山学院
小椋裕介(7区)
2014(3年)
1:02:40
2015(2年)
1:03:37
-57
青山学院
藤川拓也(9区)
2014(3年)
1:08:04
2015(4年)
1:09:23
-79
東洋
服部弾馬(7区)
2014(1年)
1:03:27
2015(2年)
1:03:35
-8
日本体育
矢野圭吾(9区)
2013(3年)
1:10:26
2014(4年)
1:08:29
+117
日本体育
鈴木悠介(6区)
2013(3年)
0:59:33
2014(4年)
0:58:51
+42
13人平均 -21.5 13人合計 -279

1位でタスキを受けると、単純計算で一人当たり21.5秒タイムを縮めた事になる。
(ちなみに区間1位と区間10位の選手のタイム差と、区間1位で無かった時の区間10位の選手のタイム差を計算すると一人当たり37.8秒のタイムを縮めた計算になった)
つまり、先頭効果は復路の5人で1分45秒(一人あたり21秒)から3分10秒(一人あたり38秒)くらいの恩恵があるのだ。
1位と2位以下のチームが全く同じ実力だとしたら、最終的に1分45秒から3分10秒以上は離されてしまうわけだ。

最近10年間の箱根駅伝において1位と2位のタイム差が3分未満だったのは、10区で逆転劇があった2021年(第97回)のたったの1回だ。

1位と2位はこんなに差が着く!(次ページ)

コメント

  1. じゃあ、先頭効果は分かったけど、なぜ箱根駅伝は一区ではなく二区にエースを置くのか

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    7
    • 1区だとみんな先頭集団で固まってゴールすることが多いから差が付かないけど
      2区なら集団がバラけて、集団走をしにくくなるため、ここで先頭を取りに行くとそのままリードした状態で、それこそ先頭効果で有利に進めるられるから

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      2
    • 1区だと差がつかないからでしょ

      10
      2
    • すでに回答してくれた方がおりますが、同じ認識です。
      1区は一斉にスタートし、集団で固まって走る集団走をした方が体力を温存できるので有利です。
      ゴールの直前まで集団で走り体力を温存し、最後の最後にスパートをかけて集団から抜けていく戦略であるため、それほど大きなタイム差は生まれません。
      これが2区となると、集団は小さくなるため、3区にタスキを渡す時点でトップにいると後続との差がついているため、その後に先頭効果を得やすくなります。

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      2
  2. 風除けの効果なんて中継車の真後ろにピッタリとくっついてるわけでもないのに、そこまでの大きな影響があるわけないだろ普通に考えて

    それならむしろ選手の真後ろについて集団で走る方がよっぽど効果がある

    実力がなかったり、メンタル面が弱かったり、距離弱い選手は先頭だろうが失速するだろうしもちろんそれも実力の範囲内

    先頭にそこまでの効果があるわけではなく、大きく遅れたチームが焦りでペース配分が乱れたり、メンタルの影響を受けたりすることによって先頭のチームと差が生まれやすくなるのが事の本質

    駅伝において1区から出遅れたくない最大の理由がそれだろ
    遅れたくない理由は他にも上位集団の速い流れに乗れればメリットもあること

    無能ど素人じゃなければこれくらい常識なんだよ 

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    • 本文中にも書きましたが、風よけ以外に、中継車がペースメーカーの役割をしたり、前を追わなくてよいのでオーバーペースになりにくいなどのメリットがあります。
      確かに2位以下の場合、選手の後ろについたり競いあったりするメリットはあるかもしれませんが、必ずしもそういった好条件に恵まれるわけではありません。
      本文中のサンプル13名が同区間を1位でタスキを受けた時の方が平均で21.5秒速く走ったり、総合タイムの1位と2位の差が5分49秒と大きくなってしまうのは、先頭効果が絶大である裏付けと言えるでしょう。

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      • 青学が圧倒したから平均を押し上げてるんだよ
        そんな事も分からないから無能ど素人なんだよ

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        • 確かにそれはありますね。
          青学の優勝時は、復路の選手も往路と遜色の無い選手が揃ってましたから、先頭効果も相まって、2位との差がものすごい付きましたので、外れ値とみなしてよいかもしれません。
          中央値で見た方がいいかもしれません。
          2013~2022年の中央値は4分54秒でした。

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  3. 中立って人は偉そうな態度の割には、大したこと言ってないな

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  4. 元駅伝ランナーだけど、先頭で走ると高揚感が違う。
    でも、トップに立って「失敗したらどうしよう」みたいにビビってしまうような性格だと難しいかも

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