「恐山(おそれざん)は遊び半分で言っちゃ駄目だよ」そう言って父が私たちに車を貸してくれた。
普段は寡黙な父が念を押すのは心配なのだろう。
恐山への山道は、特に変わったことがなく、延々と単調な曲がり道が続いていた。
ユキ「カオリ、大丈夫?」
カオリ「うえー気持ち悪い・・・。」
東京育ちのカオリは車に乗った事があまりなく、乗り物酔いをしやすい体質だ。
急な山道のカーブを曲がるたびにカオリの顔色は血の気を失っていった。
恐山に行く途中に「長寿」「若返り」の水として知られる「冷水」が湧き出している場所がある。
石が組まれた上に3つの木のパイプがあり、そこから断続的に水が流れ落ちている。
その奥にはお地蔵様がたたずむ。
ユキ「ひゃー冷たい!」
カオリ「アヤも降りて来ればいいのに」
私「あ、私は来た事あるから大丈夫だよ」
私が降りなかったのは、父の言葉が気になったからだ。
暗くならないうちに恐山を降りようと考えていた。
この山道は暗くなると極端に視界が悪くなる。
カーナビで恐山までの道のりを確認した。
「冷水」から恐山まで約4キロメートル。車で約15分だ。
すると、車の窓から真っ白な肌の女の人が話しかけてきた。
女の人「学生さんですか?」
私「はい そうです」
女の人「若くていいですね 肌が綺麗で」
私「いえいえ、ありがとうございます~(照」
女の人「年は取りたくないものね・・・でも、年を取るのは死ぬよりもずっとラッキー」
私「へ?!」
ユキ「ん?アヤどうした?」
カオリ「誰?さっきの人」
私「ん。何でも無いよ」
ユキ「綺麗な人だったね」
ユキ「ねえ さっきの人 幽霊だったらどうする?」
カオリ「ちょっとやめてよー こんな場所で」
参道を歩いて行くと、どこからともなくカサカサカサと乾いた音が聞こえてきた。
ユキ「何この音?」
足元を見るとカサカサ音をたてて風車が回転していた。
更に進んで行くと本殿が見えて来た。
カオリ「この本殿 囲いの骨組みがむき出しなんだけど・・・」
本殿に向かって左側には、「地獄めぐり」の入口がある。
生きたまま死後の世界が体験できると言われている場所だ。
ユキ「こんなところに本当に入るの・・・?」
私「私は何度か親と来たことがあるから大丈夫だよ!」
私を先頭に3人は奥へと進んで行く。
ユキ「この道 人間が歩いて出来た道じゃないよね」
奥に進んで行くと、湖の色が変色していた。
ユキ「何でここだけ水の色が違うの?」